自分のことはなかなかわからないもんだ2

河野嘉恵

2014年08月15日 21:24




前回の続きです

自分のことはなかなかわからないもんだ







さて、飲まず食わず遊ばず眠れずだったなっちゃんが、入所して1週間たったある日、とうとう・・・とうとうお茶の入ったコップに初めて手をかけたのです!


その時の図がコチラ



わたしはこんな感じでコップを手にしておりました。





で、この時のなっちゃんは、コップをこのようにつかんだのです。





・・・・おわかりいただけるだろうか?


こともあろうになっちゃんは、親指を下にしてコップの取っ手をつかんだのです。


実際やっていただけるとよくわかると思うのですが、この状態で私が手を離せば、当然のことながらコップはひっくり返り、お茶はこぼれてしまいます。


絶体絶命の大ピンチ。



でも人ってこういう時、ピンチを切り抜けるための知恵を絞るどころか、単純に慌てちゃうのよね。





「なっちゃん!そんな持ち方したらお茶がこぼれちゃう!(゚Д゚;)」

・・・・思わず叫んじゃったよ。






するとなっちゃん、1歳児とは思えぬ鋭い目つきでキッと私をにらんだかと思うと、パーーーーン!!と一瞬にして私の持っていたコップを叩き落とすという大技を繰り出してきたのです。




その瞬間




私の中で張りつめていた何かがプチッと切れました。





瞬間的になっちゃんを膝からおろして床に座らせると、私は正座になってなっちゃんと向き合いました。





こんな感じ






そして半泣き状態でこう叫んだのです。


「先生だってね!一生懸命やっているんだよ!!でもどんなに頑張ってもなっちゃんの要求に100パーセント応えられるわけじゃないんだから!!」





・・・・たっぷり2秒、ぽっかーんとするなっちゃん。

が、次の瞬間火が付いたように「ぎゃああああああああああああああああああ!!!」と大泣き。


その泣き声にはっと我に返った私は、慌ててなっちゃんを抱き上げて「ごめんねごめんね!一番つらいのはなっちゃんなのに!」と必死で謝るものの、当然なっちゃんは泣き止まず途方にくれてしまい、園長先生に泣きついたのでした。




もうこの時の自己嫌悪といったら!

これをやったのがお母さんならわかるのですよ。24時間子どもと一緒にいれば、こんな状態になっても不思議ではないと思うのです。

でも自分は保育士なのに。

これは仕事なのに。

保護者の方は、きっと心配しながら、それでも預けてくれたはずなのに。



なのに1歳の赤ちゃんを相手に何をやっているんだ私は・・・とめちゃくちゃ落ち込みました。

落ち込むうちに、保育士として・・・というより、人間的に間違っているような気がしてきて、「私・・・赤ちゃん相手にこんなことでいちいち感情爆発させていたら、この仕事をしちゃいけないのかもしれない」という考えすら頭をよぎりました。

それくらい当時の私は、とことん落ち込んでおりました。





・・・で、


そのことを、保育士ではない子育て中の友達に話したのですよ。


きっと同じ立場の保育士に話したら「あー・・そっかぁ。やっちゃったね。仕方ないよ。また明日から可愛がってあげれば大丈夫だよ」と励ましてもらえそうな気がしていました。

でも当時の私は、自分が許せなかったので、親の立場である友人に話して、ちゃんと叱ってもらいたかったのかもしれません。
(どんだけマゾだったんだ自分)




でもその友人は私の話を、最後までうんうんしながら聞いた後、たった一言、こう言ったのです。















「かえみちゃんって優しいんだね。たったそれだけで済んだんだ」

















・・・・へ?











自分の中の「私ってなんてダメな人間なんだ」という世界がガラガラと音を立てて壊れていった瞬間でした。



そしてそれまで「自分はこの仕事をやってはいけないのかも」とまで思い詰めていた重苦しい気持ちが一気に吹き飛び、「よし、また明日から頑張ろう」と素直に心から思えたのです。



なぜあの時、あんなふうに素直に「頑張ろう」と思えたのか、今ならよくわかります。



友人は、私がやってしまった行為に対して「それはやってはいけないこと」を前提に、叱るわけでも励ましたわけではありませんでした。

私がやってしまった行為の中にある、私の愛情に気が付いてくれたのです。




でもこれ、落ち込んでいる最中ってなかなか気づけない。

失敗して自己嫌悪に陥っている時ほど、なかなか自分の中の本当の想いや愛情がわからない。

だってマイナスばかりが大きく見えてしまっているから。






でも今だったら


今だったらわかるのです。





友人が教えてくれたように、やってしまった行為の中に、実は愛情があったことも

そしてそんなに自分を追いつめて、自分を責めたかったのも、すべてはなっちゃんや保育士という仕事への愛情からきていたんだなとわかるのです。


本当はなっちゃんを傷つけたくなかった

本当は保育士として、しっかり仕事をしたかった



そんな自分の本当の気持ちに気づけたとしたら、その本当の気持ちを大切にすればよいと思うのです。






そんなことに一つ一つ気づけた頃から、私は失敗することや、誰かに迷惑をかけてしまうこと、傷つけてしまうこと・・・怖さが半減したように思います。
なぜなら必要以上に自分を責めなくなったからです(´∀`)



そうはいってもまだまだ行ったり来たりではありますが(笑)

でもそれすらもね、良しとしていいんじゃないかなーと思っております☆





あ、ちなみになっちゃんではありますが・・・



その事件から1週間後、憑き物が落ちたように「保育園大好きっ子」になりました(笑)
お母さん曰く、朝になると早く保育園に連れて行けと大騒ぎだったそうです(´∀`)






私、どうやらなっちゃん試験官による2週間の試用期間を合格できたみたいです。



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